1級ワインの技術で手の届くワインを
シャトー・ムートン・ロートシルトとオーパスワン。ボルドーとカリフォルニアを代表するワインを手掛けた醸造責任者が、
その能力をフルに発揮して、手の届く価格でまとめたワイン。それが、ボルドー右岸のフロンサックから産するシャトー・レ・トロワ・クロワだ。
パトリック・レオンが引退後の1995年から手造りで始めたワインは、メルロとカベルネ・フランが主体。左岸のカベルネ・ソーヴィニヨンとは違うが、さすがは1級シャトーの栄光を守ってきた醸造家。フロンサックとは思えない洗練ぶりに仕上がっている。
樽を回転させてラッキング(澱引き)するオクソラインを用いて、18か月間の新樽熟成を施している。メルロ80%とカベルネ・フラン20%。凝縮度としなやかなタンニンが両立し、あふれるばかりの果実味。バランスのよさは、サンテミリオンのグラン・クリュ・クラッセに匹敵する。
サンテミリオンに匹敵する果実味とバランス
亡くなったパトリックと共にワインを造り、今では中心人物の息子ベルトランは「フロンサックの土壌はサンテミリオンの粘土石灰岩と共通する。ネゴシアンが積極的でなかったため知名度は低いが、ポテンシャルは大きい。人生をかけて、そのイメージを変えたい」と、熱い想いを語る。
通常のレ・トロワ・クロワのほかに、セニエによるロゼも少量だけ生産されている。赤ワインを醸造する過程で、樽から抜いて造るロゼは、フルーティで、幅広い料理に合わせられる。元々は家族の結婚式のために造られたのが始まり。ロゼブームの昨今にあって、通だけが知るワインとなっている。
ボルドーの市場を左右する評論家ロバート・パーカーは、トロワ・クロワを、新ヴィンテージが出るたびに試飲して評価する。毎年のように、新たなスターが登場している現代にあって、安定した実力がある証拠だ。パーカーは「パトリック・レオンは、自宅を構えるエステートからのワインに深みと豊かさを加えた」と評している。